また桜の季節を迎えました。心が何となくうきうきします。虫も植物も動物も人間も全ての生き物が元気になります。
1ヶ月余り、山奥の施設で暮らしたことがあります。目の前に湖があり、周りが山に囲まれた、自然が豊かで静かな所でした。もう20年以上前のことです。
2月末から4月初めにかけてだったと思います。着いたばかりの時は、山の木々に葉はなく、枯れたように殺風景でした。湖も凍りついて寒々としていました。生き物は全く姿を見せませんでした。
毎日、湖を見下ろす山の中腹まで、山道を往復しました。目の前の葉のない木々や凍りついた湖を見ていると、このままいつまでも、寒い冬が続くのではないかと思いました。元来寒がりやの私は少し不安になりました。
ところが3月に入ると、湖の氷が割れて、解け出し、青い湖面が顔をのぞかせました。山の至る所に草の芽が吹き出してきました。4月になると、若葉が萌え、花が咲き出しました。木々の枝や石垣に、可愛いリスが出て来て愛嬌を振りまいていました。死んでいた大地が蘇ったようでした。その余りにも大きな変化に感動しました。
春の訪れは、わずか1ヶ月余りで、山や湖に劇的な変化をもたらしました。そして、私の凍りついた心をも解かしてくれたように思いました。
毎年、春が来るのは当たり前です。しかし私には、春が来ることはどんな不思議なマジックにも負けないほどの奇跡だと思います。