トトロに会える街、所沢

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 西武新宿線に乗って、東京都から一駅出ると、埼玉県の所沢に着く。地図を見て、航空記念公園や山、湖など、遊び盛りの子供を育てる環境を考えて、所沢に住んでいたことがある。
 航空記念公園には、とてもお世話になった。日本で初めて飛行場が作られた地だけあって、本物の飛行機はもちろんのこと、記念館の中は様々な飛行機の展示や飛行操縦のシュミレーションなど子供が喜ぶものでいっぱいだった。3Dが見られる映画館も迫力があって良かった。何度見たか数え切れない。
 外の遊具も、子供が好きなアスレチックやターザンロープなどがあり、飽きることなく何度も繰り返して遊んでいた。自作の飛行機を飛ばしたり、凧あげもした。キャッチボールやバトミントン、テニスなども楽しんだ。
 大人にとっても良い所だ。四季折々の花、特に梅園や桜、日本庭園など楽しみがたくさんあった。隣にある市民文化センター・ミューズには何度もコンサートを聞きに行った。沢山の感動に出会った。
 家の近くにトトロの森があった。映画の「となりのトトロ」の舞台のモデルになったところである。「トトロ」というのは、小さな子が所沢のことを「ととろざわ」と言ったことに由来すると聞いたことがある。
 狭山丘陵の中にあり、里山の風景や雑木林などの豊かな自然がたくさん残っている。子供の頃遊んだ野山を思い出させてくれる懐かしい雰囲気の森だった。
 この辺りは映画に出てくる山や木、病院、地名などがある。
 メイがトトロと出会った近くの神社のモデルもある。神社のモデルになったのは、山之神神社とされているが、今はトトロ神社とも呼ばれている。
 映画に出てくる七国山は、ここでは八国山である。かつては山頂から八つの国の山々が見えたのだそうだ。
 この辺りは鎌倉時代の古戦場でもある。新田義貞北条高時が激突したところだ。新田義貞を偲ぶ将軍塚がある。
 山の麓には、狭山湖多摩湖がある。正式名称はそれぞれ山口貯水池と村山貯水池だ。ともに人造湖であり、東京都に水道水を供給している。東京都の水道水は、市販されているペットボトルの水とほとんど味が変わらないと聞いている。湖の近くに住んでいても、残念ながら埼玉県人はその恩恵を受けられない。東京都民が羨ましい。
 二つの湖は人工的でやや趣きには欠けるかもしれないが、日常から離れて気分転換をするには十分なところだ。私はどちらかというと狭山湖のほうが好きだ。明るい雰囲気を感ずる。湖の上にあるとんがり屋根の小さな家も楽しそうだ。
 湖の周りにはサイクリングコースもあり、何度も走った。展望デッキからは、晴れていると富士山がよく見える。
 富士といえば、近くに荒幡富士という人工の富士山がある。富士講の人たちが造ったとても小さな富士山だが、入口に鳥居があり、一合目から十合目までちゃんと立て札がある。晴れていると、頂上から富士山が見える。
 展望図を見て嬉しくなった。故郷にある懐かしい山の名前が載っていたからだ。雁ヶ腹摺山という山だ。昔の五百円札の裏に描かれていた富士山が見える山だ。正月に父や兄と登った思い出深い山だ。埼玉から、まさか富士山以外に故郷の山が見えるとは夢にも思わなかった。
 トトロの森には、梅林や多くの桜もあり、市民の憩いの場所となっている。桜の季節になるとよく花見に出かけた。大勢の家族連れが集まっていた。一日過ごすにも十分なところである。
 実は学生時代の春休みに、一人でサイクリングで山梨から狭山湖に来たことがある。五、六時間かかったような気がする。ちょうど湖の周りの桜が満開で、美しかった記憶がある。
 近くに西武園ゆうえんちもある。子供にとっては、自然よりもこちらのほうが好きかもしれない。家族で何度か行った。
 ここで夏には毎週花火が打ち上げられる。家からも見えなくもないが、ただ遠くから眺めているだけでは、テレビで見ているのと余り大差がない。
 やはり花火は、火薬の匂いが届き、爆発する時の音響が体に伝わってくる距離で見ないと、本当の醍醐味を楽しむことができない。なので何度か家族で間近まで見に行った。
 しかし、やはり私にとっては自然のほうが落ち着く。森の中を散策するのはとても心地良い。落ち葉をザクザク踏みながら、木漏れ日の下の小径を歩く。立ち止まって耳を澄ましてみると、森が奏でる美しい音色が聞こえてくる。小鳥たちのさえずり、虫たちの歌、風でカサカサ揺らぐ葉の音、皆心地良く耳に届く。日常とは別世界だ。どこからともなく、トトロがふっと現われて来る雰囲気がある。
 この世の喧騒から逃れて、静かな幸せな時間を過ごすことができる。毎日行っても飽きないところであり、毎回新しい発見がある。
 夏になると、カブト虫やクワガタなどが取れる。虫網と虫籠を持って子供と取りに行った。
 クヌギやコナラの木を探して一本一本隅々まで良く見て歩いたが、最初は中々見つからなかった。半日探しても、一匹も見つからない時もあった。子供にせがまれて、毎週のように探しに行った。
 ある日、カブト虫取りの名人に会った。コツを教えてくれた。虫が大好きな蜜が流れている木を探せばいいのだ。
 それからは、ほぼ確実に取れるようになった。しかし、その頃には、子供がカブト虫に飽きてしまった。取ったカブト虫も全て森に返した。
 どうも子供は、ただカブト虫を取るのではなく、探す楽しみがあったのかもしれない。行けば確実にいるのでは、ワクワクして探す楽しみがなくなったのだろうか。育てることにもそんなに興味を持たなくなった。
 やはりカブト虫にとって、自然の中で暮らすのが 一番幸せなのかもしれない。人間にとっても虫たちにとっても自然の中が一番心が休まるようだ。このような森を子々孫々いつまでも残して欲しいものだ。

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by リクルート住まいカンパニー