挿し木からイチジクの実

十年以上前に挿し木をしたイチジクの木がベランダにあります。鉢が小さいので、木も細くて三十センチほどの長さしかありません。
十年たっても実がならないので、捨ててしまおうかと思っていました。ところが去年、何と二つ実がなったのです。まだかまだかと熟すのが待ちきれず、二つの実を収穫しました。妻と一つづつ食べたものの、やはり早すぎて、甘味がほとんどありませんでした。がっかりしました。
今年は実が三つなりました。去年の失敗を繰り返さないために、熟すまで待ちました。三つのうち一つだけ実の先が少し開いて、とても甘くて良い香りがただよってきました。
いよいよ取って食べようと、朝ベランダに行くと、どこを探しても熟したイチジクがありません。すると、近くの電線に止まっている鳥が大きな声で鳴いているのが聞こえました。春にイチゴの実を鳥に何度も食べられたことを思い出しました。甘い香りに誘われて、鳥が食べたのに違いありません。
「しまった」
と気づいてもあとのまつりです。悔しいやら恨めしいやらで、がっかりでした。残った二つの実だけは守ろうと、袋をかぶせて、ひもで結びました。
なかなか大きくならないなと思っていると、一つの実がだんだん腐り始めました。最後に黒くなってしぼんでしまいました。最悪です。
残った一つはなかなか大きくなりません。だんだん気温も低くなり、このまま腐ってしまうのかとも思いました。
さつまいもの葉っぱに隠れて、しばらく見ていませんでしたが、葉っぱをどけて見ると、知らぬ間に大きくなっていました。全体が紫色になり、甘い香りもしました。
今度こそ鳥に奪われまいと、その場で収穫しました。包丁で半分に切ると、とてもいい感じに実が詰まっていました。さっそく妻と味わいながら食べました。何ともいえない甘さが口の中にフワーと広がりました。大満足の一品でした。
ところでイチジクは漢字で「無花果」と書きます。花が咲かないのに実がなります。それで花の無い実と書きます。しかし実際は実の中にたくさん詰まっているのが花です。
十二月に一回り大きな鉢に植え替えて、来年はもう少したくさんの実をつけてもらおうと考えています。