家系の盛衰⑤親子の繋がり

お題「#おうち時間
f:id:hiroukamix:20200529055144j:plain 70代の婦人と40代の娘さんが二人で暮らしていた。顔を合わせると毎日喧嘩していた。
「クソ婆、早くくたばってしまえ!」
「バカ娘、とっとと嫁に出て行け!」
の繰り返しだった。だから食事もいつも別々だった。
 婦人は、自分が生まれて直ぐに産後の肥立ちで母親が亡くなっていた。母親に抱いてもらった記憶もないという。子供の時に母の日が来る度に嫌な思いをした。何故早く亡くなってしまったのかと、ずっと恨んでいた。母親から愛された思い出がないので、自分も娘にどう接して良いか分からないと言う。このままではいけないと思いながらも、つい口論になってしまう。
 その頃よく10人前後のグループで瞑想会をしていた。ある日その婦人も一緒に瞑想をしていたら、赤ちゃんを抱いた若いお母さんが出てきたという。誰だろうと良く見ると、赤ちゃんは自分だったそうだ。すると、若いお母さんは自分の母親か、と思った瞬間、その婦人はワッーと泣き出してしまった。一緒にいた皆が何事かと驚いたが、瞑想が終わった後そんな話をしてくれた。
 しばらく泣き明かした後、我に返ると、母親に対する恨みが消えていたという。すると娘に対する恨みも一緒に消えてしまった。そして家に帰ったら、娘に謝ろうと思ったそうだ。
 家に帰って驚いた。娘が夕食を作って待っていたのだ。生まれて初めてのことだった。不思議と娘も母親に対する恨みが消えていたのだ。娘に何故恨みが消えたのか聞いたが、理由が分からないと言う。突然気持ちが不安になって、気がついたら「お母さん」と言って泣いていた。
 それは何時頃かと聞くと、丁度母親が瞑想をしている時間だった。不思議な事があるものだ。親子の情は繋がっている、とその時に感じた。

続く