下坐に生きる①

f:id:hiroukamix:20210120053700j:plain ドキュメンタリー作家の神渡良平氏の本は、事実だけに、いつもとても感動します。そして説得力があります。氏の本に『下坐に生きる』という本があります。その中に、温かい心で孤独で寂しい少年の心を溶かした方の話があります。今日から3回に渡って、話のおすそ分けをしたいと思います。
 その少年は親の愛を受ける事なく人間不信の塊でした。うどん屋の娘の所に遊びに来ていた大工との間にできた少年でした。娘が妊娠したと聞いてから大工は来なくなりました。娘は少年を産んで、そのまま亡くなったそうです。
 ですから、その少年は父親も母親も知りません。天涯孤独の人生でした。施設に預けられた後、母親がいたうどん屋で働いていましたが、主人の暴言や暴力の為にうどん屋を飛び出しました。そして神社の賽銭泥棒をしながら神社の縁の下で暮らしていたそうです。
 賽銭泥棒が見つかり、補導されて少年院に入れられました。その後結核となり、病院に入院しました。病院では誰にも心を開かず、
「院長の馬鹿野郎」とか
「早く殺せ」
と言っては、周囲の人々を困らせました。
 実は、この少年は、あと数日しか命が持たないという状況でした。このまま、もし終わっていたら、無念な生涯だったと思います。しかし、捨てる神あれば、拾う神あり、です。

続く