クリスマスのアイスケーキ

今週のお題「クリスマス」
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 子供の時に、夕飯は三百六十日はうどんだった。毎晩粉から作った。今でもうどんは大好きだ。残りの五日は赤飯が出てきた。家族の誕生日だ。特別なご馳走も出た。親の気遣いを感じた。六人家族なので、本来六日だが、母の誕生日は私と二日違いなので、私の誕生日に一緒に赤飯を出した。だから、母の誕生日だけうどんだった。毎年それが申し訳ない気持ちだった。
 誕生日の中でも父の誕生日だけは特別だった。十二月二十五日でクリスマスだからだ。父は世界中で自分の誕生日をお祝いしてくれる、と喜んでいた。
 父の姉が吉祥寺で蒟蒻とアイスクリームの店をしていたので、父の誕生日には、毎年アイスクリームで作った大きなデコレーションケーキが届いた。クリスマスと誕生日を合わせた特別バージョンだ。直径が二十センチ以上あるアイスクリームの生地の上に生クリームやチョコレート、イチゴなどが乗っていた。ほっぺたが落ちるほど美味しかった。地球上にこんなに美味しい物はない、と子供心に思った。毎月クリスマスが来れば良いと、欲張りなことを考えた。
 今は一年中アイスはどこでも売っている。昔は今と違って、冬にアイスクリームを売っている店は、近くに一つもなかった。だから冬に食べるこのアイスケーキは格別だった。
 冬にアイスクリームを食べるだけでも特別だったのに、アイスケーキは最高の贅沢だった。毎年、十二月になると、父の誕生日よりも、クリスマスよりも、アイスケーキを首を長くして待っていたような気がする。夢を見るほどに、指折り数えて、その日を待った。親戚にアイスクリーム屋さんがあることが、こんなに幸せだと思ったことはなかった。