種の不思議⑦

f:id:hiroukamix:20200320042115j:plain 花柄摘みというのがある。パンジービオラ、コスモスやシクラメンなど多くの花に対して、花が枯れたら花柄を摘む。花が咲いた後、そのままにしておくと、種を作る方に養分を取られてしまい、花が咲かなくなってしまうからだ。私もよくやる。しかし考えてみると、これは植物に対して、とても意地悪な行為だ。
 わざと、種を作らせないからだ。種が作れない植物は、子孫を残せなくなるという危機感を感じて、また花を咲かせる。そうやって、花を長く咲かせ続けることができる。
 植物は子孫を残すことに執念を持っている。だから何とか種を作ろう、作ろうと必死だ。それを次から次へと花を摘まれてしまうのだからたまらない。何と意地悪なことを私はしているのだろう、と思ったことがある。
f:id:hiroukamix:20200320042144j:plain 最後にもう一つ、必死に生きる、そんな種さんたちに謝らないといけないことがある。申し訳ないが、私は納豆やナッツが大好きだ。特に納豆は毎日食べる。芽がでる前に、食べられてしまう種さんたちは、何と思っているだろうか。 
 私自身は、
「あなた達の分まで一所懸命に生きるので、許して下さい。私の肉となり骨となって、世の中のお役に立つように一緒に生きていきましょう。」
 と思いながら、
「(あなた達の尊い命を)頂きます。」
 と言って食べさせて頂く。種さんたちの本当の気持ちは分からない。それでも、私は納豆やナッツを食べ続けるだろう。

種の不思議⑥

f:id:hiroukamix:20200319050752j:plain ほとんどの木の実は、種が成熟する前は、渋かったり苦くて食べられない。そこに植物の生存戦略が隠されている。例えば、柿が青い内は、種がまだ未熟なので、蒔いても芽が出ない。だから食べられては困るのだ。そこで柿は、種が未熟な時は渋くなっている。そんな柿を食べた鳥は、二度と青い柿を食べない。
 種が成熟すると、柿は甘くて赤くなる。渋柿の場合も、種が成熟すると、柿が真っ赤に熟して甘くなる。熟した渋柿は甘柿よりもずっと甘い。これが食べても良いサインだ。鳥に食べてもらって、肥やしとなる糞と一緒に種を蒔いてもらう。
 手も足もない木が、そのようにして遠くまで種を運んでもらい、子孫を残していく。何と賢いのだろう。
 遠くまで種を運ぶと言えば、島崎藤村が作詞した「椰子の実」を思い出す。
「名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ」
 椰子の実は、海に浮かんで種を運ぶ。そして遠くの地で芽を出して、子孫を残す。
 たんぽぽやカエデのように、風に乗って遠くに運ばれる種もある。ホウセンカカタバミは弾ける力で1~2メートル種を飛ばす。10メートルも種を飛ばす植物もある。少しでも遠くに種を運び、子孫を増やそうと、植物たちは皆一所懸命だ。

続く

種の不思議⑤

f:id:hiroukamix:20200317080326j:plain 食べ蒔きの続きだが、イチゴの種は不思議だ。実の周囲に付いているぼつぼつが種だ。ワイルドストロベリーはとても小さな実だが、良く実を付けてくれる。昨日も2粒収穫した。小さいが、甘味が凝縮されていて美味しい。瓶に入れて冷凍保存して、たまったらジャムを作る。
 ミニトマトは、たった一粒の実から取った種で、千以上の実がなった年もある。食べた実から種を取り、毎年種蒔きをしている。蒔いた記憶がないが、ワイルドストロベリーの鉢の中からミニトマトの芽が1月頃出てきた。今10センチ位になっている。(上の写真)そろそろ移植しようと思う。
 キュウイは、あんなに小さな種なのに、1年で1メートル位に蔓が延び、2年目で3メートル近く延びたので、ベランダがジャングルになってしまうと思い、処分してしまった。
 食べ蒔きした種の中で、アボガドの種が一番大きかった。種の周りに爪楊枝を3本刺して、平らな方を下にして、水を入れたコップに底を浸けておくと、1ヶ月程で根が出てきた。更に数日して芽が出た。1メートル位まで育ったが、油断していたら霜に当たってしまい、あっという間に枯れてしまった。寒さに弱かったようだ。
 桃栗3年と言うが、桃は4年以上経つが、まだ花が咲く気配はない。60センチ位になった。
 スイカは一度だけ中くらいのが、できたことがあるが、それっきりでお仕舞いだ。やはりベランダでは狭過ぎる。
 あれやこれや、色々と試してみたが、種にはロマンがある。生活を、わくわくさせてくれる。

続く

種の不思議④

f:id:hiroukamix:20200317054926j:plain 食べた果物や野菜の種を蒔いたことがある。芽が出たのは柿、リンゴ、桃、葡萄、柑橘類、キュウイ、アボガド、ビワ、メロン、スイカ、イチゴ、トマト、カボチャなど。
 種から実が成るのは簡単ではない。
「桃栗3年柿8年、梅は酸いとて13年、枇杷と梨は15年、柚子は阿呆の18年、みかん大馬鹿20年、林檎ニコニコ25年、女房の不作は60年、亭主の不作はこれまた一生」
 柿8年ではなく、10年以上かかって、ようやく花が2輪咲いた。しかし、残念ながら実が成る前に花が落ちてしまった。
 葡萄(上の写真)は花が咲き、最初の年は4房実が成った。10年以上も経ち、本当に実が実るのだろうかと半ば諦めかけていたのでとても嬉しかった。小さな実で、少し酸っぱかったが、美味しかった。その後毎年実をつけている。
 みかんは実が成るのに20年もかかるので、接ぎ木をした。5、6本の枝を接いだが、1年目は全部失敗した。2年目は3本ほど接いで、一つだけ成功した。接ぎ木した穂から芽が出て、葉がついた時はとても感動的だった。何年かして、実がなった。甘くて美味しかったのでとても嬉しかった。しかし最近は花はたくさん咲くが、実が大きくなる前に全て落ちてしまう。原因は分からないが、土が硬くて、根が窮屈ではないかと思う。一度土の入れ替えをしようと思う。

続く

種の不思議③

f:id:hiroukamix:20200316055924p:plain 
 松ぼっくりは生まれる前から、山火事があるのを知っていたに違いない。
 最近アマゾンやオーストラリア、アメリカなどで起きた山火事のニュースをよく聞く。不思議なことに、あえて消火活動をしない場合があるという。そのほうが元の自然が再現されるというのだ。
 燃えた草木が肥やしとなる。そこに鳥や虫、風が種を運んで来る。蜂や蝶が受粉を助ける。環境に頼るだけではなく、植物自身の中に生きる意志や子孫を残す仕組みがあるようだ。
f:id:hiroukamix:20200316055940j:plain 
 ジャックパインやロッジポールパインという松の仲間がある。山火事で木も葉も焼けてしまっても、その松の実は焼け跡に残る。普通の松ぼっくりとは全然違う。火事でも焼けないのだ。ハンマーで叩いても壊れないという。頑丈にできている。では、その松ぼっくりは、いつ、どのようにして種を撒くのだろうか?
 雨が降ったその後に、太陽の光が差すと、自然と松ぼっくりが開き、地面に種が撒かれるそうだ。
 何と賢い植物だろうか。火で焼かれ、水に触れて、日を浴びて初めて芽が出る。そのようにして、子孫を残している。従って山火事が起きないと、子孫を残せない仕組みなのだ。
 だから、この松ぼっくりは生まれる前から山火事が起こることを知っていたことになる。足がなく歩くこともできず、口がなく喋ることもできない松ぼっくりが、生きる術や子孫を残す術を知っているのは驚きだ。
 植物には人間が想像できない不思議な仕組みや、感動的な営みがある。

続く

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種の不思議②

f:id:hiroukamix:20200315062043j:plain 種は天才だと思う。また種は素晴らしい芸術作品だ。あの小さな一粒の中に、無限の知恵と美が詰まっている。
 もう10年以上育てているゼラニウムがある。1年の300日位は花が咲いている。いつもは花柄を摘んでいたが、たまには種を付けさせてみよう、と思った。花弁が全て落ちた後、長細い種が熟すのを待った。
 暫くして種を覆っているさやが緑から茶色になった。そして、さやの先が開き、幾つか種が出てきた。種に綺麗な羽が付いていた。スパイラル状に白い羽が広がっている。見ていても飽きない芸術作品に思えた。ヘリコプターのように風に乗って、遠くまで運ばれて行くのだろう。
f:id:hiroukamix:20200315061317j:plain どこかで見覚えのある形だ。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた飛行体のデザインに似ている気がする。天才のダ・ヴィンチが、鋭い画家の目で人体などを描いた絵が沢山残されている。もしかしたら、ダ・ヴィンチは、ゼラニウムの種を観察して、飛行体のデザインをしたのではないかとかと想像した。
f:id:hiroukamix:20200607063835j:plain ダ・ヴィンチの次のような言葉がある。
「理解する為の最良の手段は、自然の無限の作品をたっぷり鑑賞することだ。」
 ダ・ヴィンチは自然界のあらゆる物を、日頃から観察していたに違いない。ゼラニウムの種を見たかどうかは、私の憶測に過ぎないが。

続く

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種の不思議①

f:id:hiroukamix:20200314055431j:plain 小さな種から芽が出て、葉が吹き出し、花が咲く。そして実がなる。実の中にまた種ができる。当たり前の自然の営みだが、考えると不思議なことだらけだ。
 誰が種の中に花や木の設計図を書き込んだのだろう?あんな小さな種の中に温度や光、水を感じるセンサーがあり、敏感に反応する。とても人間には作れない。
 光合成を通して、生物のエネルギーの基となるデンプンやブドウ糖を作る。未だに、人間は高度な科学技術を使っても作り出すことができないのに、針の穴ほどの種も、いとも簡単に作ってしまう。
 先日手袋を見たら、種が沢山付いていた。いつ、どこで付いたか覚えていない。鍵のように毛糸の中にしっかりと、くっ付いていて中々取れない。ようやく取り除き、ゴミ箱に捨てたが、もしかしたら、どこかに運ばれて芽を出すかもしれない。
 足がない種は、動物に付いて移動したり、風に吹かれて飛んで行ったり、鳥や虫に食べられて、撒いてもらう。
 火山の噴火で作られた新しい島にも、いつの間にか草花や木が生えてくる。仲間を増やしたり、子孫を残すために、巧妙な技を使いこなす。生きる為の知性や技術、美を生み出す創造性も備えている。種は不思議だ。

続く

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