ほとんどの木の実は、種が成熟する前は、渋かったり苦くて食べられない。そこに植物の生存戦略が隠されている。例えば、柿が青い内は、種がまだ未熟なので、蒔いても芽が出ない。だから食べられては困るのだ。そこで柿は、種が未熟な時は渋くなっている。そんな柿を食べた鳥は、二度と青い柿を食べない。
種が成熟すると、柿は甘くて赤くなる。渋柿の場合も、種が成熟すると、柿が真っ赤に熟して甘くなる。熟した渋柿は甘柿よりもずっと甘い。これが食べても良いサインだ。鳥に食べてもらって、肥やしとなる糞と一緒に種を蒔いてもらう。
手も足もない木が、そのようにして遠くまで種を運んでもらい、子孫を残していく。何と賢いのだろう。
遠くまで種を運ぶと言えば、島崎藤村が作詞した「椰子の実」を思い出す。
「名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ」
椰子の実は、海に浮かんで種を運ぶ。そして遠くの地で芽を出して、子孫を残す。
たんぽぽやカエデのように、風に乗って遠くに運ばれる種もある。ホウセンカやカタバミは弾ける力で1~2メートル種を飛ばす。10メートルも種を飛ばす植物もある。少しでも遠くに種を運び、子孫を増やそうと、植物たちは皆一所懸命だ。
続く