偉人の母⑧特攻隊の母鳥濱トメ

f:id:hiroukamix:20200609060835p:plain 鹿児島の知覧に特攻隊の基地がありました。鳥濱トメは、その近くで食堂を営み、3000人以上の特攻隊員を見送りました。
 トメの食堂は、軍の指定の食堂として、特攻隊員が毎日食べに来ました。親元から離れ、いつ出陣するかも分からない特攻隊員にとって、トメは母のような存在として慕われていました。
 特攻隊員は出撃前の最後の晩を、決まってトメの食堂で過ごしました。皆母の愛に触れたかったに違いありません。
 トメは最後くらい美味しい物を食べさせたいと、代金以上の物を出すので、家計は火の車でした。着物を売り、タンスを売り、借金しながらの経営でした。
 特攻隊員達が、唯一本音を言い、心を和ませる事ができた場所がトメの食堂でした。
 特攻隊員はほとんど皆帰らぬ人となりました。特攻隊は軍の機密だったので、居場所を家族に直接知らせる事もできませんでしたが、トメは隊員達の手紙を家族に伝えていました。
 戦争が終わり、知覧に米軍が駐留するようになったら、今度はトメの食堂が米軍の指定食堂になりました。自分が息子のように接した特攻隊員の敵の立場の人を迎える事にトメは大きな抵抗がありました。
 しかし接してみると、米軍の若者達も故国から遠く離れて暮らすのが寂しい、まだあどけない青年でした。そして皆トメの事を「ママ」と呼びました。トメは敵も味方も隔てなく、母の情で若者たちを愛しました。
 お世話になった特攻隊員の家族がトメにお礼に来ましたが、家を戦火で失い、住む所もない人たちがいる事を知ったトメは家を改造して多くの特攻隊員の家族の世話をしました。また戦争で家族を失った身寄りのない子供達も何10人と預かって、自分の子供と同じように育てました。
 トメを通して、母性愛は偉大だとつくづくと思いました。