寂しく虚しい香りを放つ金木犀

f:id:hiroukamix:20191207053024j:plain 匂いと言えば、やはり金木犀が頭に浮かぶ。一度書いたこともあり、またすでに時期は過ぎてしまったが、今週のお題にちなみ、再度登場させて頂く。一度読まれた方には申し訳ない。ただお題は口臭を意図しているようなので、少し内容が違う点はご容赦願いたい。 
 団地の階段を下りて、一階の出口を出ると、両側に金木犀の木がある。十月の半ば頃に、その強い香りが秋の空気を伝わって来た。確かに良い香りだが、木の由来を聞いてから、この香りが漂うと寂しく虚しい思いになった。その香りが強ければ、強いほど、寂しさも虚しさも大きい。
 金木犀の原産地は中国だ。江戸時代に日本に渡来した。イチョウと同じで、株が雄と雌に分かれている。香りが良いのは雄の木だ。雌の木は花の数も少なく、香りも弱い。だから園芸用として、中国から日本に渡来してきたのは雄の木だけだった。日本中にある金木犀は全て挿し木で増やした。即ち親株と全く同じ遺伝情報を持つクローンなのだ。簡単に挿し木で増やせる木だ。
 だから、どんなに雄株が花粉を飛ばしても、雌株に届いて受粉されることはない。日本に雌株はないのだから。何と虚しい木だろうか。雌株に届くように、これでもか、これでもかと必死に花粉を飛ばしているような気がする。植物は子孫を残す為に、健気(けなげ)なほど必死だ。
 決して結ばれることのない雄株と雌株。とても哀れでならない。金木犀の香りにはいつも寂しさと虚しさを感じる。

「すごいニオイ」#ジェットウォッシャー「ドルツ」


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