落ち穂拾いとキリストの誕生

f:id:hiroukamix:20191123175604j:plain今週のお題「秋の空気」

「秋の空気」と聞いて目を閉じてみた。するとまぶたに一枚の絵が浮かんできた。ミレーの「落ち穂拾い」だ。記憶を辿ってみると、中学か高校の頃、新聞のチラシの中に入っていて、とても気に入ったので、額に入れて部屋の壁に掛けていた。今でも実家に帰ると壁に掛かっている。それから40年以上が経っている。貧しい女性たちが落ち穂を拾っている絵だが、どこか寂しい雰囲気の中にも、生きるたくましい力を感じた。絵から「秋の空気」も伝わって来る。
 絵を飾ってから30年以上経って、それが旧約聖書の「ルツ記」と関係があることを知った。ルツは異邦人ではあったがイスラエル人と結婚した。夫が亡くなった後、姑から故郷に帰りなさい、と言われたが、ルツは帰らなかった。二人は姑の故郷に移り住み、ルツは落ち穂拾いをしながら姑を助けて一緒に生活をした。
 村の人たちは、実の母娘と間違えるほどにルツは姑に尽くした。それを見て感心した姑の親戚の男性がルツをみそめて結婚した。そして、ルツの孫からイスラエルの王となるダビデが生まれ、更にその子孫からイエス・キリストが誕生した。(この文章をスマホで書いていたら、突然目の前に真っ白い鳩が舞い降りてきた。何か天の演出を感じた。)
 ルツは異邦人でありながら、神の目に止まった。その理由は、一つはイスラエルの神に対する信仰が誰よりも篤かったに違いない。もう一つは姑に対する精誠だと思う。嫁と姑の関係は今も昔も、洋の東西に関わらず、永遠の課題だからだと思う。その課題を乗り越えたルツを神は選んだに違いない。
 誰かに言われたからでもなく、誰かに認められる為でもなく、ルツは人知れず精誠を尽くした。そのルツの信仰と精誠が人の心を動かし、神の計画にさえ大きな影響を与えた。神が最初から異邦人を通してキリストを誕生させる計画があったとは考えられない。そのことを知ってから、「落ち穂拾い」を見ると、とても美しく神聖な絵に感じるようになった。
「ルツ」という字を子供の名前に入れるクリスチャンがいる。昔、朝ドラの主題歌を歌ったクリスチャンの歌手がいたが、本田路津子(ルツコ)という名前だった。
「落ち穂拾い」は、貧しい女性たちの絵ではなかった。心豊かで愛情と信仰の深い女性の絵だった。