今週のお題「秋の空気」
秋の味覚の代表格はぶどうだ。学生時代に甲府の大学に通っていたこともあり、ぶどう園でアルバイトを毎年していた。
種なしぶどうを作る為の作業だった。当時一番ポピュラーな品種がデラウェアだった。小粒の赤茶をしたぶどうだ。今は巨峰やマスカットなど大粒のぶどうが主流になり、デラウェアは隅に追いやられている。見向きもしない人が多い。
種をなくす為には、ジベレリンという赤い液が入ったコップを、ぶどう一房一房全てにすっぽりと入れていく。広いぶどう園の棚の下で、一日中顔を上に向けて、腕を上げて行う気の遠くなる作業だ。だんだん首が痛くなり顔が上がらなくなる。肩も痛くなって、腕が上がらなくなる。コップを持っている手を持っていない手で支えたり、腕を交代しながら朝から夕方までの作業は本当に辛かった。肩も凝る。
種なしぶどうを作るのに、こんなに手間がかかるとは知らなかった。しかもこの作業を全てのぶどうの房に二回しなければならない。一度ジベレリン処理をすることによって、種と実と両方の成長が止まる。二度目をすることによって、種の成長は止まったまま実だけ成長が始まる。更にこのジベレリン処理をした後24時間以内に万が一雨が降ったら、全ての房に対してもう一度やり直さなければならない。とても大変な作業だ。
このバイトをしたお陰で、ぶどう園から毎年秋になると、収穫したばかりのぶどうが沢山届いた。食べ放題だった。それは最高の味だった。
今でも種なしぶどうを見ると、その一房に込められた農家の方の苦労を思う。最近はぶどうがとても高いので、中々口にすることができなくなってしまったのが残念だ。