ラジオのスイッチを押したら、アウシュビッツに入っていた老女の話が流れてきた。
子供の時に、弟と二人で捕まり、列車でアウシュビッツに連れて行かれたという。弟の足を見たら、靴を履いていなかった。弟に言った。
「あなたって、何て馬鹿なの。靴はどうしたの?」
その後、男女が離れ離れにされ、二度と弟と会うことはなかったと言う。弟に残した最後が「あなたは馬鹿」という言葉だったことに対して、何十年経った今も後悔していると言う。その時から、誰と話をしても、それが最後の言葉になるかもしれないと思って話をしてきたと言う。
確かに言葉というのは、人を幸せにも不幸にもする。自分の語る言葉に責任を持ち、悔いのない言葉を話そうと思った。