言葉の力④最後の言葉

f:id:hiroukamix:20200707044217j:plain ある日、何気なく家でラジオのスイッチを押したら、アウシュビッツに入っていたユダヤ人の老女の話が突然聞こえてきました。
 子供の時に、幼い弟と二人でナチスに捕まり、列車でアウシュビッツに連れて行かれたそうです。列車に乗ってから弟の足を見たら、靴を履いていませんでした。姉は弟に言いました。
「あなたって、何て馬鹿なの。靴はどうしたの?」
 そう言った切り、口もきかずに収容所行きの列車に揺られて行きました。
 列車を降りてから、男女が離れ離れにされ、姉は二度と弟と会うことはなかったそうです。弟に残した最後が「あなたって、何て馬鹿なの。」という言葉だったことに対して、何十年経った今も後悔していると言います。何故もっと優しい言葉を掛けて上げられなかったのか、悔いたそうです。
 その時から、誰と話をしても、それが最後の言葉になるかもしれないと思って話をしてきたと言います。
 人間はいつ死ぬかも分かりません。またいつ会えなくなるかも分かりません。自分の語る言葉に責任を持ち、悔いのない言葉を話そうと思いました。