富士山頂の満天の星(2/2)

今週のお題「理想の老後」
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 天の川も肉眼でくっきりと見えた。文字通り、天上を流れる川のようだった。いつまで見ていても飽きなかった。今でも、その光景がはっきりと目に焼き付いている。やっぱり富士山は素晴らしい。登って良かった、と思った。
 うっとりと星空に見とれている内に、段々と辺りが明るくなってきた。次はご来光である。富士山の東側に移動して、雲の間から出てくる太陽を待った。
 大勢の人々が山頂にいた。目的は皆ご来光だろう。その一群に外国人のグループがいた。英語の勉強と称して話しかけた。意気投合して一緒に英語の歌を歌った。富士山が結んでくれた縁だった。
 赤く染まった雲の中から、ようやく太陽が出てきた。思わず手を合わせた。感動の瞬間だ。富士山頂から見る日の出は格別だった。何という美しさだろう。苦労して登って来た甲斐があった。
 やはり富士山は日本一の山だった。遠くから見る富士も、富士から見る眺めも最高だと思った。
 星空に引き続き、ご来光も瞼に焼き付けて、名残惜しかったが、山頂に別れを告げて下山した。
 下りは、砂走りという斜面を駆け下りた。一歩足を踏み出すたびに、十メートルくらい砂と一緒にザーッと下りて行った。まるで砂の上でスケートをしているようだった。とても気持ち良かった。記憶が正しければ、一時間もかからず、五合目まで下りてきたような気がする。
 通勤電車でも途中車窓から富士山が見える。毎日、必ず富士山が見える側に立つか座る。見えると毎回嬉しい。見えないと寂しい。私の目は、いつも富士山を探している。 
 最近、富士山の麓にある忍野八海に行った。子供が小さい時にも何度か行った。富士山の湧き水でつくられた八つの池だ。近くに水族館もある。とても富士山の眺めが良いところだ。四季折々の景色が楽しめる。
 しかし、今回は曇っていて、忍野八海からは富士山が見えなかった。久し振りに富士山の麓まで行き、期待していただけにとても残念だった。朝、向かう途中は雲が全くかかっていなかった。箱根からもちゃんと見えた。忍野八海に行く途中から急に雲が出てきて、着いた時は完全に雲に覆われていた。
 ふと思った。富士山は時として女性に例えられる。富士五湖は鏡、顔には雪化粧、スカートも履いている。大勢の美男子が行ったので、恥ずかしくて、顔を隠したんだ、と。