金メダルの笑顔②

f:id:hiroukamix:20200326053626j:plain そして、運命の瞬間はジャンプの時にやってきた。何回転かして着地する、その時だった。思わず、「あーっ」と大きな溜め息をついた。
 着地に失敗して、すってんころりんと大きく尻餅をついてしまったのだ。しかし、本当に驚いたのは次の瞬間だった。転んだ直後、何もなかったかのように笑顔で起き上がり、残りの演技を見事に締めくくった。最後は満面の笑みだった。まるで転ぶこともなく、最高の演技で金メダルを取ったかのような笑顔だった。
 普通の選手なら、苦笑いをするか、悔しさを表現しただろう。しかし、ジャネット・リンの余りにも爽やかな笑顔に、一瞬で虜になってしまった。
 あの太陽のような眩しい笑顔は、作り笑いや苦笑いでは決してなかった。
 それで自分の拙い英語能力も顧みずに無謀な挑戦を始めた。辞書を片手に精一杯の努力をして何日もかかってようやく手紙を書いた。内容は全く覚えていない。ところが肝腎の住所が分からない。アメリカという宛名だけで行くはずもない。結局住所を探すのに2ヶ月くらいかかっただろうか。
 出したは良いが、返事など絶対に来ないだろう、と期待は余りしていなかった。しかし、もしかしたらと、淡い思いを抱いて毎日家の外にあるポストを見に行った。何ヶ月も音沙汰がなかった。やっぱり来る訳がないなと、諦めかけた頃だった。

続く

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