小鳥の訪問者(2/2)

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 ハワイで感動したのは、それだけではなかった。私は泳ぎが上手くない。しかし、せっかくハワイまで来て海で泳がない訳にはいかない。オアフ島のワイキキビーチで仲間と泳いでいた。ふと海の中を見ると、何と魚が横で一緒に泳いでいるではないか。とても驚いた。人間を怖がって逃げて行かないのだ。
 私が知っている魚は、人が近づくと、一瞬で逃げて行く。子供と近所の小川にメダカをよく取りに行った。気配をなくして、そーっと近づいたのに、影が水面に映った瞬間に全てのメダカが一目散に逃げて行った。まるで怪獣が襲って来たような慌ただしさだ。魚というのは皆そのようなものだと思っていた。それなのに、人間を恐れることなく、一緒に泳いでくれるハワイの魚には親しみと癒しを感じた。
 ホテルのプールにイルカがいて、人間と一緒に泳いでいたが、イルカは別格だ。以前テレビで見た動物学者の話を思い出した。「純粋な愛情で接すれば、野生動物も人間を怖がらない」という話だ。
 ハワイは長い歴史の中で、人間と動物たちが愛情で結ばれてきたところではないかと思った。人間が動物に対して、畏怖や慈愛の心を持って信頼関係を築いてきたに違いないと思う。ハワイにいると、本来人間と自然は一つの家族なのだ、とつくづく感じる。動物を檻の中に入れたり、動物を恐れたり、動物が人間に噛みついたりすることは当たり前ではないのだと思った。
 天国はこのように、鳥も魚も動物も虫も植物も、皆家族のように仲良く一緒に暮らしているところではないかと思う。早くそんな世の中ができたら良いな、と思う。  
 そもそも地球上の生物の中で、一番自然を破壊したり、争い合ったり、憎しみ合っているのは人間かもしれない。ハワイにも戦争や争いの傷跡があちこちにある。
 あの空から舞い降りて来た小鳥やワイキキビーチの魚たちのほうが人間よりも遥かに良識があると思う。