小鳥の訪問者(1/2)

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 以前テレビで、ある動物学者の映像を見た。多分ノーベル賞を受賞したオーストリアの動物行動学者のコンラート・ローレンツ博士だと思う。信じられないことだが、その学者は野生のライオンの口の中に自分の手を入れていた。純粋な愛情を持ってすれば、絶対にライオンは噛まないというのだ。
 ただし、一度でも人間に襲われたり、罠にかかったことがあるライオンは駄目だそうだ。そういうライオンは人間に対して恐怖心や不信感を持っているからだという。
 心からの愛情を示せば、どんな野生動物も人間に危害を加えない、と話していた。ただ、番組の最後に「絶対に真似しないで下さい。」と言っていた。現実には、純粋な愛情や絶対的な信頼関係というのは難しいと思う。人間と動物が仲良く共存する世の中が来るのは、簡単ではない気がする。
 しかし、一度だけ野生動物との心地良い触れ合いを体験したことがある。 
 がんらい寒がり屋の私にとって、常夏のハワイという島はまさにパラダイスだ。照りつける太陽も吹きつける熱風も、とても心地良かった。
 真夏にクーラーが効いた部屋からアスファルトの道に出ると、ムーという熱さを感じるが、私はそれが大好きだ。とても快感だ。ハワイにいると、それと同じ快感をずーっと味わうことができる。
 ハンモックに揺られながら、遠くの海をボーッと見ている時間は何と贅沢だろう。そのまま時が止まってくれたら、どんなに幸せか分からない。 
 時々空に現れる虹は何とも言えない感動を与えてくれる。海を真っ赤に染めながら沈んで行く太陽の演出も見事だ。そんなハワイが私は大好きだ。
 しかし、私がハワイに行って何よりも感動したことがある。ホテルの外に素敵な庭があり、青空の下のテーブルで、朝食をしていた時のことだった。
 白い皿の上にパンやサラダが乗っていた。すると、突然どこからともなく、一羽の小鳥が私が食べているテーブルの上に舞い降りて来たのだ。メリー・ポピンズが傘を広げて、空からやって来たみたいな気分だった。一瞬の出来事で、何が起こったのだろうかと思った。
 小鳥の種類は分からなかったが、とても綺麗な可愛い鳥だった。そして、何と私が食べかけていたパンを突き始めたのだ。 小鳥は私のことなど全く気にせず、恐れることもなく、逃げる気配もない。私はそのまま鳥が為すがままに任せて、ただじっと見ていた。
 まるで木の上で木の実を突いているように、小鳥は私の目の前で無心に皿の上のパンを食べていた。とても不思議な感覚だった。
 野生の鳥がこのように警戒心を持たずに人間に近寄るとは、全く驚きだった。家のそばで色々な鳥を見るが、人が近づくと皆パーッと飛び立ってしまう。この舞い降りて来た小鳥が愛おしく、とても親近感を感じた。ずーっと私が飼っていて懐いているペットのようだった。
 パンを食べて、十分満足をしたのか、小鳥は一目私のほうを向いて、感謝の会釈をしたように見えた。そして、目の前のテーブルから空へ飛び立って行った。突然の可愛い訪問客を迎えて、夢を見ているような、とても幸せな気分になった。