心を元気に、豊かにさせる音楽(1/2)

今週のお題「○○の秋」
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 私は何と言っても「芸術の秋」が好きだ。芸術の中でも音楽が一番だ。
 毎朝不思議なことがある。起きてトイレに入った瞬間、歌が耳元に流れてくるのだ。自分では全く予期しない歌ばかりだ。童謡やテレビの主題歌だったり、クラシックや昔の流行歌もある。ほとんどが子供の時に聞いた歌や二十年も三十年も前の歌ばかりだ。歌は毎日替わる。そしてトイレを出ると鳴り止む。そしてしばらくすると歌も忘れてしまう。最近引っ越しをしたが、家が変わっても、同じ現象が起こっている。もう何年も続いている。
 歌を聞くのは好きだ。レコードからカセットテープになり、CDやMDになり、デジタルオーディオにもだいぶお世話になった。最近は、ユーチューブなどで、気軽に音楽が楽しめて便利だ。
 今までの人生の中でたくさんの歌や演奏を聞いたが、やはり生で聞いた音楽が特に心に残っている。
 もう十年以上も前のことだが、イタリア人のオペラ歌手の歌を聞いたことがある。歌詞の意味は全く分からなかった。それなのに、歌が始まった瞬間に何故か涙が流れ始めた。歌の最後まで涙が止まらなかった。
 悲しみの涙ではない。魂に訴えかけてくる心の波動が、ヒシヒシと伝わってきた。歌の響きと私の心と体が共鳴して、とても感動した。歌手のお腹の中から出てくる大きな声によって、魂が揺さぶられたような気がした。とても幸せな気持ちになった。
 北朝鮮の歌手が、イムジン河を歌ったのを聴いた。こちらは切なく悲しい思いが伝わってきた。心の底から湧いてくる哀愁と恨めしさを感じた。第一声とともに、我知らず涙が溢れてきた。
 三十年以上も前のことだが、韓国に行った時に、三十八度線を訪れたことがあった。そこで北朝鮮に向かって、祭壇を築き祭祀をしている人たちを見た。すると突然ハルモニ(お婆さん)がフェンスの向こう側の北朝鮮に向かって
「アイゴー、アイゴー!」
 と叫び出した。更に韓国語で何かを訴えている様子だった。すると、意味も分からないのに、涙が溢れ出てきて止まらなかった。ただ切なく悲しい気持ちが伝わってきた。もらい泣きだ。
 イムジン河の歌を聞いて涙が流れてきたのは、三十八度線で感じた、その時の感情と同じだと思った。
 三十八度線に行く時、途中で空を見上げると、白鳥のような白い鳥が数羽三十八度線を越えて飛んで行くのが見えた。
「あー、鳥には国境がないんだ。」
 と、その時に思った。
 聞いた話では、韓半島には三十八度線の南北を挟んで、いまだに会えない離散家族が、一千万人以上もいるという。あのハルモニも北朝鮮に離れ離れになり、会えなくなった肉親がいたのだろう。早く統一を迎えて、鳥のようにイムジン河を自由に行き来できるようになって欲しい。
 最近また歌を聞いて感動した。家から歩いて僅か三分くらいのところに東邦音楽大学がある。嬉しいことに、無料のコンサートや発表会が時々ある。
 学園祭の時は、一流の先生方のピアノやヴァイオリン、オーケストラや歌を聴くことができ、とても感謝だ。
 去年、日中友好の音楽祭があり、東邦音楽大学出身の中国人のオペラ歌手が出演した。オ・ソレ・ミオを聞いた。
 小柄な体格ではあったが、そのどこからあのような大きな声が出るのだろうか、というほどに迫力があった。真に迫ってくるものを感じた。その声は会場全体に響き渡った。私の心深くに届いた。体中の細胞が喜んでいるのを感じた。歌の意味は分からないが、とても感動した。