一粒のミニトマトが何倍になる?(1/2)

今週のお題「わたしの自由研究」
f:id:hiroukamix:20200218153445p:plain
 食べた一粒のミニトマトから取った種で、幾つのミニトマトが成るかの自由研究(?)をしたことがある。4、5年前に食べたミニトマトが余りにも美味しかった。どこで作られたどんな種類のトマトか分からなかったので、このまま食べてしまったら、永遠にこのミニトマトには会えない。
 そう思うと、食べてしまうのが勿体ないと思った。そこで、ティッシュを一枚取り出し、食べかけのミニトマトの種を幾つか取って残した。種にしつこくまとわりついていたゼリー状の部分をティッシュでよく取り除いた。初めてトマトの種をまじまじと見つめた。
 こんな小さな種の中に、茎や葉っぱ、花や実の情報が全て詰まっていることが奇跡に思えた。生命の不思議さを感じた。
 最近スーパーなどで販売されている野菜の種は、F1種といって二代目は美味しい野菜ができない、という話を聞いたことがある。だから期待しないで、ダメ元でベランダの空いていた鉢に種を適当に撒いた。
 種を撒いたことをすっかり忘れていたが、春になってミニトマトの芽がたくさん出てきた。プランターに苗を移し替えて育てた。
 毎日朝起きて、一番最初にベランダのドアを開けて、ミニトマトに挨拶をして、水を上げた。
「おはよう、ミニトマトさん。元気に成長して、たくさん美味しい実をつけて下さい。」
 トマトが成長するのが楽しみだった。子供の成長を見守るようだ。昨日よりも少しずつ伸びるたびに嬉しかった。
 双葉から本葉になり、スクスクと伸びていった。茎や葉っぱからトマト特有の甘酸っぱい香りがしてきた。
 しばらくして、初めて黄色い花が咲いた。そして、次から次へと花が咲いた。花が落ちると、そこに小さな実が見えた。大きくなるのが待ち遠しかった。
 脇芽が出るたびに取り除いて、二本仕立てにした。トマトの茎だけでは自分の体重を支え切れなくなり、竹で支柱を作り、長くなった茎を紐で結んだ。
 実が段々と大きくなり、黄緑色から橙色となり、ついに赤くなった。初めての実を取って食べた。あの時の美味しさと比べると、多少は物足らなかったが、それでも自分で育てたミニトマトの味は格別だった。新鮮さは全く文句ない。いつも取り立てだ。
 六月下旬から九月頃まで、ベランダ産ミニトマトは毎日数個から十数個、我が家の食卓に乗った。たった一粒のミニトマトから、結局その夏だけで千粒以上の実が収穫できた。味も問題なかった。(明日に続く)