一粒のミニトマトが何倍になる?(2/2)

今週のお題「わたしの自由研究」
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 トマトは連作障害があり、狭いベランダで育てる為には毎年土を変える必要がある。それで水耕栽培をしようと考えた。すると、以前読んだ「ハイポニカの不思議」という本を思い出した。
 ハイポニカというのは、植物を土の代わりに水で栽培する方法だ。野澤重雄さんという方がハイポニカトマトを栽培して、つくば万博で披露してから有名になった。
 植物の根が成長する時に、一番の障害が土だという。土が根の成長を妨げるというのだ。水の中では根が自由に伸びて、大きく成長し、実がたくさん成る。一粒のトマトの種から一万個以上の実が成ったという。
 それだけではない。野澤重雄さんは語る。
「栽培する人間の心の作用が植物の生育に重大なる影響を及ぼす。」
 これは凄い話だ。植物が人間の心に反応するとは。それを証明する、こんな話がある。 
 ハイポニカトマトのことを知った映画の龍村仁監督が、「地球交響曲 第一番」という映画のラストシーンにハイポニカトマトの映像を入れたいと考えた。
 野澤重雄さんにお願いして、映画撮影の為のトマト栽培を始めた。監督は、一万個実ったトマトを自分の手でカメラに収めると考えていた。しかし突然ヨーロッパに出張になり、熟していつ落ちてもおかしくない時期を十日過ぎないと戻れないという。
 ならば誰か別の人に撮影を頼めば済むことだが、龍村監督は「自分で撮るので誰も撮るな」と言い残して、出張に行ってしまった。
 遂にトマトが熟して、いつ落ちてもおかしくない時期を迎えた。三日過ぎ、一週間が過ぎ、十日が過ぎた。奇跡的にトマトは落ちずに耐えている。ようやく龍村監督が出張から帰って来た。そしてカメラに収めた。
 その翌日のことだった。ダッダッダッダッダッ、という凄まじい音とともにほとんどのトマトが落ちた。まるでカメラに収まるのを見届けるように。
 龍村監督は言う、
「トマトは私たちが撮影することを知っていたのです。それで必死に頑張って、顔を真赤にしながら十日間も待ち続け、撮影を終えたので、あー良かった、と気を抜いた途端、一気に実を落としてしまったんです。」
 この話を読んで感動した。植物にも本当に心があるのだ、と思った。更に植物だけではなく、私たち人間にも、まだまだ知らない無限の可能性があるのかもしれないと思った。
 私もハイポニカとは言えないが、水耕栽培に挑戦してみた。トマトの種を植えて、苗が少し育ったら、ペットボトルに移して育てるのだ。苗がボトルに落ちないようにスポンジで固定する。藻が発生しないように、ボトルの周りをアルミで覆う。ボトルを液体肥料で満たし、減った分だけ追加する。
 場所も取らず、水やりの手間も省ける。連作障害がないので、毎年栽培ができる。今はもっぱらこの方法だ。
 夏になるとベランダに所狭しとペットボトルが並ぶ。