神様の愛「お蚕様」

今週のお題「わたしの実家」
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 子供の頃に実家でお蚕(かいこ)様を飼っていました。シルク(絹)を口から出してくれる蛾の幼虫です。家の2階はお蚕様専用のスペースでした。大きな梯子を昇って2階に上がりました。

 木の床の上にござが敷いてあり、その上でお蚕様を育てました。最初はごま粒より小さいのが、桑の葉っぱを食べて、どんどん大きくなりました。
 山に桑畑があって、細い山道を登り降りしながら背負子を背負って桑を運ぶ手伝いをよくしました。

 白いお蚕様の体が段々と透き通って来ると、糸を出します。透き通ったお蚕様だけ選ぶことを「ひき拾い」と呼んでいました。四角い小さな枠が沢山ある50センチ四方くらいの木枠にそのお蚕様を入れます。するとお蚕様は枠の中で繭(まゆ)を作ります。

 繭を作り終えると、枠の中から繭を出す「繭かき」をします。「ひき拾い」や「繭かき」の時は、子供達も総動員で手伝いをしました。お祖母ちゃんは、この繭かきの名人でした。慣れた手つきで、目にも止まらぬ早さで枠の中から繭を出します。繭が山のように積まれると白い大きな袋に入れます。

 繭かきが終わると四角い木枠を畳んで、忙しかったお蚕様の仕事が一段落します。しかし、お祖母ちゃんの仕事は更に続きます。
 繭の形がいびつだったり、シミが付いた繭などを集めて、糸巻き車で絹糸を作っていました。

 繭をお湯で茹でた後、糸の先端を引き出すと繭がクルクル回りながら糸が巻かれていきます。一つの繭から延々と糸が出て来るのを見ているのが面白かったです。たった一つの繭から1500メートルくらいの糸が出るのだそうです。その糸を撚って裁縫用の絹糸にしていました。お祖母ちゃんに代わって針にその糸を通すのがいつも私の仕事でした。

 お蚕様は「天の虫」と書くように、神様が人間に下さった素敵なプレゼントだと思います。