新人研修の思い出④門の貼り紙

f:id:hiroukamix:20200401042124p:plain 門に貼ってある言葉を何度も繰り返して暗唱した。そして、どうしたら、感謝の心になるのかを考えてみた。
 何にもないのに、感謝するのは難しいと思った。話も聞いてくれない。誰も買ってくれない。実績は何もない。どうして良いかも分からない。これでどうやって感謝するんだろうと思った。
 しばらく考えてみた。感謝できそうなことを色々と探してみた。するとフッとひらめいたことが幾つかあった。
 今自分が生きていること、と言うよりも生かされていること、歩けること、目が見えること、喋れること、耳が聞こえること、太陽や空気があること、毎日三度、三度食事ができること、・・・。こんなにいっぱい感謝できることがあったんだ、と思った。
 気持ちを変えて歩み直した。「売ろう、売ろう。」ではなく、「感謝、感謝。」と自分に言い聞かせた。
 すると、次の家から立て続けに売れた。今まで売れなかったのが嘘のようだった。あっと言う間に、全部売り切れてしまった。
 感謝したら、本当に恵みがやってきた。正に「感謝するから幸せなのだ」と思った。
 しかし、とても不思議だ。売る商品もトークも訪問するエリヤも何も変わっていない。ただ自分の心の持ち方が変わっただけなのに、こんなに結果が違うとは。 
 人間の幸福や不幸は自分の心の持ち方次第だと思った。特に感謝の心を持ち続けることの大切さを学んだ。
 その後、二十年以上経ってからのことだった。何か衝動にかられて、ふと本屋に入ると、突然ある本がスーッと目の前に飛び込んできた。まるで私を待っていたかのようだった。すかさず手に取って、パッと開いて見た。すると何とそこに、
「美しい物を美しいと思える、あなたの心が美しい」
 という言葉が書いてあった。びっくりした。その言葉と再会してとても嬉しかった。慕わしい人と久し振りに出会ったような気分だった。そして、あの時の感動が蘇ってきた。
 その本は、相田みつをの「人間だもの」だった。すぐにその場で購入して、家でじっくり読んだ。味わい深い言葉がたくさん書かれていた。書道で書かれていた字も素朴で気に入った。
 しかし、「感謝するから幸せ」のほうは、いまだに誰の言葉か分からない。多分、受けた恵みに感謝するのは勿論のこと、当たり前のことにも心から感謝し、更にどんな試練や困難にも感謝して生きた人の言葉に違いないと思う。
 どちらにしても、この二つの言葉は、長年に渡って、私に大きな希望と勇気を与えてくれた。この言葉を語った人と、この言葉を門に貼ってくれていた農家の人と、あの日の午前中、私に断わってくれた全ての家の人々に感謝したい気持ちだ。そのお陰で会えた言葉だから。
 感謝の言葉、美しい言葉は感謝の心、美しい心を育ててくれる。感謝の心、美しい心は幸せと喜びを運んでくれる。

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