空から落ちて来た有り難いお土産

今週のお題「紅葉」
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 朝、駅に向かう途中に雨が少し降っていた。傘を差す程ではないと思ったが、大切な書類が鞄に入っていたので、手に持っていた傘を開いた。
 駅に着いて傘を閉じると、傘にべっとりと鳥の糞が付いていた。傘を差していて良かった。もし傘がなければ、自分の頭か服に落ちたかと思うと、ホッとした。
 以前知人が町を歩いていたら、鳥の糞が落ちて来て、頭にベチャッと掛かったそうだ。急いで近くの美容室に駆け込んで、シャンプーをしてもらった。美容師さんと話していたら、何と遠く離れた田舎の同級生だったことが分かった。何十年振りで、お互い気が付かなかったが、鳥の糞が取り持った縁で旧友との再会ができた。
 私も先ほど鳥の糞を被っていたら、何か不思議な縁があったかも知れない。残念だ。
 空から何か落ちて来ると言えば、十年以上前の話だが、紅葉が少し過ぎた頃に、所沢にあるトトロの森を散歩した。落ち葉がザクザクと音を立てて気持ちが良かった。森の小道は枯れ葉がクッションのようにふわふわだった。
 すると、突然風が吹いたかと思うと、木の葉が雪のように沢山舞って来た。風が吹く度に葉っぱが落ちて、木がみるみる内に寂しくなっていった。その分、地面は赤いカーペットがどんどん厚くなった。
 家に帰って上着を脱ぐと、枯れ葉が一枚くっ付いていた。真っ赤に紅葉した綺麗な葉っぱだった。見れば見るほど完璧な出来映えだった。暫く見とれていた。捨てるのが勿体なくて、本の間に大事に挟んでおいた。残念ながら、その本が今どこに行ったかは分からない。
 ここまで書いて、電車を降りた。プラットフォームで待っていたら、ふと目の前に貼り紙があった。
「頭上鳩の糞にご注意下さい。」