猫から人間に成長した私?

今週のお題「〇〇の成長」
f:id:hiroukamix:20200222062429j:plain 子供の時に家で猫を飼っていた。名前はマリと言った。白と黒の斑模様の毛をしているメス猫だった。寝ていると、よく布団の中に入って来た。冬は湯たんぽ代わりになった。朝起きてみると、兄の布団の中で子猫を何匹か生んでいたことがあった。その後、その子猫たちがどこに行ったかは覚えていない。
 マリはいつも何もしないで、毬のようにじーっと丸くなって寝そべっていることが多かった。だからマリと名づけたかどうかは分からない。
 マリは好きな時に起きて、好きな所に行って、好きな時に帰って来て、好きな時に寝ているように見えた。私は子供の時に学校に行ったり、人と話をしたり、作文を書いたりする事が大嫌いだった。煩わしかったのだ。だから私はマリがとても羨ましかった。猫になりたいと、本気で思っていた。
 私はこたつで背を丸くして座り、両手を頬のつっかえ棒にして、そんなマリを羨望の眼差しでじーっと見つめていた。マリと目と目が合うと、
「恥ずかしいので、そんなにじっと見つめないで欲しい。」
 とマリが言っているように感じた。
 何故自分は猫に生まれて来なかったのか、いつも悔やんだ。
 猫と話ができないので分からないが、猫は猫で色々苦労しているのだろうか?人間に生まれたかった猫もいるのだろうか?猫からは人間が羨ましがれているのかもしれない。
 猫が喋ったら、
「猫を舐めるんじゃないよ。猫には猫の悩みや苦しみがあるんだ。この人間は、何て馬鹿なことを言っているんだ。代わって欲しけりゃ、いつでも代わってやるよ。」
 と言いそうだ。 
 しかし、それも今となっては昔のことだ。今は人間も捨てたものではない、と思っている。話すことも書くことも楽しいからだ。過去の自分では考えられない。言葉で表現できることがどんなに幸せなことか、とつくずくと感じるこの頃である。猫には失礼だが、猫に生まれて来なくて良かった。