対岸が見えない川(2/2)

f:id:hiroukamix:20191125105522j:plain 何度かラ・プラタ川に釣りに行った。川と言っても、川幅が百キロ以上もあり、向こう岸が見えない。大陸の川はスケールが大きい。雨が降ったあとの泥水のような茶色をしていた。
 数時間釣りをしたものの、岸で投げ釣りをした組は誰も一匹も釣れなかった。船釣りをした組は大漁だった。翌朝、川魚が朝食に出たが、あの茶色い川の色にしては、生臭さもなく、美味しかった。
 モンテビデオには、旧市街と新市街があった。新市街は文字通り、ほとんど新しい建物だった。旧市街は古い建物が多く、貧しい人たちが住んでいた。一度食事をする為に旧市街に行った。車から降りた瞬間に子供たちが群がって来て、手を出した。お金をくれ、と言っているのだ。ポケットからコインを出して上げた。何も上げないと、襲われると聞いていた。
 新市街は安全だと思っていたが、初めて行った時に、一人がカバンを引ったくられてしまった。次に行ったら今度は別の一人が殴られて、財布を取られた。真っ昼間に街の中で公然と被害に合ったのだ。警察に届けたが、「残念ですが、諦めて下さい。」という返事で、全く対処してくれる様子がなかったという。あなたの運が悪かったと言わんばかりだった。
 観光などの予定がない日は、街に出るのが怖くて、しばらくホテルの中で、大人しくしていた。さいわいホテルのブュッフェは食べ放題だったので、朝から昼過ぎまで好きなだけ、洋食や果物、デザート、飲み物などを楽しみながら歓談した。
 また、部屋のテレビをつけたら、映画の「怪傑ゾロ」をやっていて、これが本当に面白かった。以前見たことがあったが、この映画はスペイン領だった時のメキシコが舞台であり、スペインを相手に戦ったゾロの物語だ。ウルグアイも元はスペイン領だったので、ゾロをとても身近に感じた。 
 私たちが宿泊したホテルの目の前に独立広場があった。その中央に独立戦争の英雄アルティガス将軍の騎馬像が凛々しく立っていた。将軍はスペインと戦った英雄であり、ウルグアイ独立の父と呼ばれている。全く違う立場だが、ゾロとアルティガス将軍が少し重なって見えた。
 広場の地下は霊廟になっていて、間接照明の薄暗い空間が幻想的に広がっていた。アルティガス将軍の骨壺が安置されていて、近衛兵が立って番をしていた。
 プンタ・デル・エステという南米有数のリゾート地に行った。大西洋に面していて、松やユーカリの木に囲まれた砂浜がとても綺麗だった。海岸の砂利石が皆茶色だった。貴石のようでとても美しかったので、家の水槽用の砂利として少し持ち帰った。家の金魚やメダカは長い間、プンタ・デル・エステの雰囲気の中で泳いでいた。
 モンテビデオ湾のはずれにある小高い丘に登った。頂上には昔の要塞跡や博物館があった。大西洋やラ・プラタ川、市街を一望できて、とても見晴らしが良かった。
 モンテビデオの街を車に乗って眺めていると、荷物を引いている馬車を時々見かけた。ゆっくりとした時間の流れを感じた。この国の人たちはとてものんびりとして、おおらかな感じがした。