対岸が見えない川(1/2)

f:id:hiroukamix:20191125105604j:plain 二十年ほど前に、ウルグアイに二度行った。ニューヨークとアルゼンチンを経由して、丸一日近くかかった。やはり遠かった。ウルグアイは日本からはちょうど地球の反対側であり、南半球にある。
 二度とも十二月末から一月にかけてだった。当然日本では冬だが、ウルグアイは夏のはずだった。確かに昼間は真夏の暑さだった。半袖シャツ一枚で十分過ごせた。ところが、夜になると、冬のような寒さだった。現地では夏用の服しか準備していなかったので、日本を出る時に着ていたジャンパーで寒さをしのいだ。
 十日間ほどの滞在で、三日目からはホテルであったが、最初の二日間はテントで外泊だった。
 夏用の薄い寝袋に、ジャンパーを着て寝たものの、雨も降り、とても寒い夜だった。ぶるぶる震えながら、ほとんど一睡もできなかった。更に、テントの隙間から中に雨が流れて入ってきて、散々な一日目だった。
 空港から移動する途中の景色は、牧草地が多かった。牛があちこちに放し飼いになっていた。この国は、人間よりも牛の数が多いと聞いた。実際、毎日牛肉が食べ放題だった。スイカも好きなだけ食べられた。
 二日目は大晦日だった。カウントダウンが始まり、年が明けた瞬間、そこら中で一斉に花火が打ち上げられた。ラテンアメリカらしく明るく陽気な年明けだった。
 真夏に新年を迎えるというのは不思議だった。こちらはクリスマスも夏だった。ただ、十二月二十五日ではなく、年を明けた一月六日だった。だから正月に続いてクリスマスが来る。全て不思議な感覚だ。
 空の星も日本とは全く違う。南半球でしか見ることができない南十字星を見た。異国情緒を感じた。二度と見ることができないかもしれないと思い、しっかりと目に焼きつけた。滞在中晴れた日の夜は、毎回見た。その時は、翌年も見られるとは夢にも思わなかった。 
 新年を迎えたが、もちろん門松も初詣もない。正月の雰囲気は何もなかった。大晦日のカウントダウン後の花火だけが雰囲気を盛り上げた。
 仲間と街に出かけた。スペインが長い間統治していたので、ヨーロッパのような雰囲気を感じた。見るものが皆珍しい物ばかりだった。牛の国だけあって、革製品がたくさん売られていた。
 しかし、電化製品などは、結構日本製が多かった。地球の裏側まで日本製品が溢れているのを見て、少し誇らしかった。
 ウルグアイの首都モンテビデオという名前は、世界一周中のマゼランが、小高い丘が見えた時に「我、山を見たり。」と言ったのが由来だと聞いた。