地獄と天国

今週のお題「残暑を乗り切る」
f:id:hiroukamix:20200218192542j:plain「乗り物」のお題の昨日の続きを書こうと思ったら、今週のお題が変わってしまいました。どうしても続きを書きたいので、「乗り物」にもう一日つき合って下さい。

 電車には忘れ物や落とし物がつきものだ。私も例外ではない。電車から降りて、手袋をしようとしたら、片方がない。全てのポケットを確認したが見つからない。とても気に入っていた革の手袋だった。すぐに駅に届けたが、結局見つからなかった。がっかりだった。
 一番気に入っていた傘を忘れたこともあった。これもすぐに届けた。幸い帰りに寄ったら届けられていた。
 通勤の時ではないが、三人の子供を連れて、海外に行く為に電車で成田に向かった時のことだ。乗り換え駅が近づいたので、子供たちにカバンを確認した。
「カバンを持っているか?」
「はい。」
 三人とも持っているのを確認したので、安心して言った。
「さぁ、降りるぞ!」 
 電車を降りて、ドアが閉まり、乗り換えのプラットホームに行こうとしたら、子供が言った。
「お父さんのカバンは?」
 子供たちのカバンに気を取られて、自分のカバンを網棚に忘れてきた。カバンの中には四人分のパスポートや財布、航空機の引き換え券などの貴重品がいっぱい詰まっていた。真っ青になった。
 すぐに駅員さんに伝えたが、電車が終点に着かないと探せないという。それでは飛行機に遅れてしまう。そもそも、途中で誰かが持って行ってしまうかもしれない。極度に不安な気持ちに襲われた。
「終点ではなく、今すぐ探して欲しい。」
 必死に頼み込んだ。しかし、確約はもらえなかった。どんどん不安と恐怖が襲ってきた。こういう時は、悪いことしか考えない。戻って来ない時のことばかりが脳裏に浮かんだ。時間が過ぎるのがとても長く感じられた。
 後悔の気持ちもどんどん膨らんでいった。絶望的な境地だった。生きている心地がしなかった。
 すると、しばらくして駅員さんが来て言った。
「今見つかりました。○○駅で預かっているので、受け取って下さい。」
 ホッと胸を撫で下ろした。カバンを受け取りに行き、空港に急いだ。子連れなので、一時間の余裕を見て家を出たので、飛行機には何とか間に合った。もう二度と網棚には荷物を置かないと決めた。
 電車通勤になって七年くらいが立つが、車で通勤していた頃よりは足腰が丈夫になったかなと思う。
 最近は、電車の中で本を読んだり、文章を作ったり、語学の勉強をしたりと、やることが多いので、通勤時間がとても貴重になった。