チコちゃんに叱られる

f:id:hiroukamix:20200208224706j:plain 小学生の頃は人間関係がとても嫌いだった。嫌いと言うよりも恐怖だった。前回書いた通り、対人恐怖症でどもりだったからだ。人間関係は煩わしい以外の何ものでもなかった。誰かと一緒にいても何を話して良いか分からないし、どう振る舞ったら良いか分からなかった。自分の中から何の言葉も出てこなかった。 
 何故言葉が出てこなかったかと言うと、チコちゃんに叱られそうだが、いつもボーッとしていたからだ。ふと我に帰ると、何も感じていない自分や何も考えていない自分がいた。心も頭も空っぽで全く働いていなかったのだ。
 焦点が何とも合わず、ひたすらボーッとしていた。だからと言って、別に退屈でもなかった。ボーッとしているのが楽だった。
 だから自分の気持ちを表現することも、自分の考えを誰かに伝えることもできなかった。話す言葉を持ち合わせていなかったのだ。
 そんな私なので、周囲から見ると全く存在感がない子供だった。同級生たちと半日一緒にいたのに、
「あれ、いつからそこにいたの?」
 とよく聞かれた。
「初めからずーっといたよ。」
 と答えると、
「えっ、知らなかった。」
 と言われるのが常だった。
 家にいても何をして良いか分からないので、兄の後ろを金魚の糞のようにくっついていた。
 小学校の時は、国語の時間が大嫌いだった。作文とか感想文とか詩を書くのが大の苦手だった。一時間ずーっと考えても、何も頭に浮かんでこなかった。だから決まって白紙で出した。
 授業中に手を上げて質問したり、意見を言うことも一度もなかった。頭の中が空っぽなので、何を言って良いのか分からなかったのだ。
 周りの人が話しをしたり、文章を書いたりできることが凄いと思った。自分には苦痛でしかなかったのに。その頃は、これを克服できるとは夢にも思わなかった。